敷地は、神戸市御影の閑静な住宅街にある、お屋敷の蔵である。炭火焼屋を計画するにあたって、分厚い壁を持つ蔵の特性は内部空間にどんな意味を与えるのだろうか。「石のように押し黙る」の言に違わず、分厚い壁の蔵は外界の光や物音、さらには情報をも遮断し、その内部に沈黙を与える。この蔵中の天地で、人々は俗世を忘れ酒を酌み交わす。 沈黙する壁が酒宴を擁するためには、ある種の饒舌性を獲得しなければならない。そこで土壁のグラフィックを着想した。これにより壁は沈黙を保ちつつも、饒舌に語りだすのだ。